はじめに
ブログを放置してたが、エンジニアリング or クライミングの話題で定期的に書きたい。
2023年の9月あたりに左手中指のA2腱鞘に痛みが出ていて、関節が痛いのはしょっちゅうだが指の節が痛いのは初めてだった。
A2腱鞘は、指の一番手のひらに近い節にある腱鞘のこと。関節ではなく腹の部分を圧迫すると痛い感じ。ガバやピンチホールドを保持したり、セミアーケ以上曲げて保持すると痛い。
最初は痛みも耐えられるくらいだったので普通に登っていたが、徐々に痛みでホールディング時に力が抜けるようになってきた。 外岩シーズン全てを棒に振るよりは、全力を出せないのなら今休んだほうが良いと判断し、安静にして治療に専念することにした。
まだ完治はしていないが、これまで調べたこと、治療の課程、もっと早くしていればよかったことをまとめる。
腱鞘の損傷とは
これを機に腱鞘の損傷について調べてみた。Pulley Injuries Explained - Part 1 - The Climbing Doctorが非常に詳しくて良い
Part1が腱鞘についてと、損傷の原因などがまとまっていて。Part2がリハビリについてまとまっている
ざっくり要約をすると
概要
Illustration Credit: Will Anglin
指を曲げるための筋肉は前腕にある。これら2つの筋肉は、浅屈指筋(FDS)および深屈指筋(FDP)という。腱は私たちの手首、手および指を通っている。腱があることによって、前腕の筋肉の力指に伝えて指を曲げることができる。
FDSは中指節までを動かし、FDPは指先まで曲げる筋肉。そして指を曲げるための最適な張力を維持するために、腱は骨に近い状態を保つ必要があり、この腱を骨に固定するものが腱鞘である。腱鞘がないと、関節などに大きな負荷がかかってしまう。
腱鞘と腱の関係は釣り竿のリングと釣り糸の関係を例にするとわかりやすい。出典: Pulley Injuries Explained - Part 1 - The Climbing Doctor
腱鞘にかかる力は指先にかかる力に比例、またPIP関節の屈曲が増加に比例する。クリンプ時は、A4腱鞘への力は3.9倍、A2腱鞘へは31.5倍に増加する。 そのため、クライマーはA2かA4腱鞘を痛めやすい。クリンプを避けたり、クリンプの状態からさらに動的に引っ張るような動きに気をつける必要がある。クリンプの状態から引いて出す、または足が滑るなどで一番負荷がかかりやすい
腱鞘の捻挫 or 断裂
症状に応じてグレードがある。グレードに応じて治療期間や方法が異なる
- Grade1(捻挫)
- 完治は6 週間
- 固定化は必要なく、受動可動域(ROM)運動を実行する必要がある。
- テープを使用して損傷を保護し、約 2 ~ 4 週間の時点で機能的な運動を行うとよい。
- 4週間後、筋力、調整力、体の意識を取り戻すために簡単なクライミングを再開できる
- クライミングに戻ったら、最長 3 か月間テープを着用する
- Grade2(A2の断裂)
- Grade1とほぼ同じだが、最初の10日間は固定する
- Grade3(A4の断裂)
- 簡単なクライミングは怪我の発症から 6 ~ 8 週間後。3 か月でクライミング再開。
- 約 6 か月間プーリー リング (またはテープ) を着用。
- Grade4(複数の腱鞘の断裂)
- 外科的な手術が必要
リハビリについて
phaseが2つに分かれている
phase1
詳細はYoutube参照
- にぎにぎ
- 握って開いて(関節毎に曲げながら)を10回×1日2、3回
- 10~20回×3セット、1日1~3回
- これで腱が周囲の滑車の中を滑るようになり、指の癒着や瘢痕組織を避けるのに役立ちます。
- 怪我をしていない場合でも、岩場に向かって歩いているとき、ウォーミングアップしているときなどにオススメ
- ペンローリング
- にぎにぎをペンを持った状態で行う
- 30~90秒×1~3セット、1日1~3回
- これらの動きは腱滑走の進化版
- 利き手ではない手の方がペンロールを行うのが難しい
phase2
- phase1のウォーミングアップをする
- 2本指ポッケにぶら下がる
- 痛みを少し再現するような軽い、馴染みのある不快感を感じるまで体重を下ろし、この位置でハングボードに 10 秒間、3 回繰り返し、各繰り返しの間に 2 ~ 3 分を置く。
- このプロセスを6 ~ 8 週間かけて進め、継続的に治療的負荷を加え、構造的な方法で組織の方向を調整し、時間の経過とともに腱を強化する
自分の治療の過程
最初は整形外科へ行き、A2腱鞘の損傷と判定された。痛み止めの対症療法は可能だが治療は基本安静にするしかないと言われたため、ジムへ行かず安静にしていた。
トレーニングはは軽くスクワットや懸垂を行っていたくらい。上記の通り、腱鞘の損傷について調べて試行錯誤してはいたが、特に治療やケアっぽいことはしていなかった。
しかし1ヶ月経っても、握り込むようなホールディングをすると痛みが休む前とあまり変わらず困っていた。記事にあるリハビリのphase2もトライしても痛みで悪化するだけだった。
困っていた時、ホームジムの常連に鍼が良いと言われ、目黒の浜崎治療院というクライマーに有名な整体で鍼を打ってもらった。そして次の日には、痛みが軽減されていることに気づいた。
また、治療してもらった時に痛みがない範囲でなら登っても大丈夫と言われたため、怪我している左手にやさしい課題を作ってもらって痛みがない範囲で徐々にクライミングを再開した。
現在は左手はオープン or ピンチだけで処理できる課題を選んで行いトレーニングしていて、治療やケアとしては定期的に鍼を打つ、あとは血行をよくすると痛みが軽減されるので銭湯に行き熱いお風呂に入ったり、マッサージガンでマッサージをしている。
アイシングも整体でオススメされたのでやってみる。アイシングは否定的な意見も多いが、温冷交代浴と同じように血行が促進されるはずなのでそこまで悪くはないのではないかと思っている。
まとめ
今回の経験から、腱鞘の損傷については
- ケアは鍼を打つ、血行をよくする
- トレーニングは痛いホールディングを制限して課題を作って登る
のが良いと感じた。ただ、最初はどんなホールディングでも痛かったのでその場合は安静にしたほうが良いだろう。
もしかしたら安静にしていたほうが指単体では完治は早いかもしれない。しかし
- クライミングを長期間行わないことによるストレス
- 長いレストをすると体幹まで弱くなってしまって戻すまで時間がかかってしまう
など、クライミングを元のパフォーマンスまで戻すというゴールではある程度登っていた方が早く戻せるのではないかと思う。
また、体を動かしたほうが血行にも良いので、治療にも役に立ってるのではないかと感じている。
あとは今後怪我した時には周りのクライマーにも同じような経験をした人が大体いるはずなので、色々聞いてみて知見を取り入れて見るのが良いなと改めて思った。